近世その2・法華信仰の特徴(仏教書の出版)
檀林教育が各地で盛んになると,
これに併せ仏教書の出版もなされるようになる.その中には日蓮聖人の伝記も刊行されるようになり,近世中期には庶民信仰の高まりとともに,開祖にたいする祖師信仰や守護神*1(鬼子母神・妙見菩薩・清正公・七面大明神・日朝上人)に対する信仰が全国に流布した.特に江戸市域には現世利益を求めて,厄除・日限・願満・安産の祖師像が造立され,聖人にまつわる霊場が生まれた.
加持祈祷が寺院内で行われ,日閑は身延積善坊流の祖と仰がれ江戸に七面大明神が勧請されるようになった.中山では日久が遠寿院流を展開した.修行の根本は身延七面山であり,山岳信仰の霊山*2として修行者が絶えなかった.
一方,浮世絵・落語・浄瑠璃・歌舞伎などのが法華美術として聖人の伝記に使用された.寺院を題材とした葛飾北斎や安藤広重の作品や長谷川等伯・本阿弥光悦*3など文化人が法華信仰を芸術作品として表現した.
<題目塔銘文・建立意図>
江戸庶民は,題目講中を始めとする信仰集団を組織し,寺院の年中行事に参加した.これらの組織は,礼拝時に題目「南無妙法蓮華経」を唱えたので,題目講と総称される.この題目講*4は聖人の50年毎に遠忌の折に題目塔を建立*5してきたのである.