水色の写真館

暮らしの雑文

あの頃のように.

話は今から12年前に遡ります.

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おじいさんとおばあさん夫婦は,近くの専門学校の学生寮からスーパーへ学生同士が賑やかに買い物にいく中,いつも一人で下を向いて買い物に行く一人の男子学生に気づきました.
ある時,気になりおばあさんが声をかけると,県外から来て下宿している同じ学生寮の学生でした.
別に一人でいることが寂しいわけでもない様子で優しい笑顔でゆっくりと話すちょっぴり風変わりな青年でした.話を聞くと偶然にも,20歳の青年は,夫婦と離れて暮らす初孫と同じ誕生月,同年齢でした.

それからは,おじいさんは青年を家に招き入れ,おばあさんは食事をご馳走し,まるで孫と過ごしているかような時間を過ごしました.
おじいさんの四十九日の法要を終えた二日後,31歳になった青年は,車を走らせ突然おばあさんの前に現れました.そして仏壇の前で長い間座っていました.
おじいさんの遺影を見て「変わらないね,少しシワが増えただけだ」と言いました.

おばあさんがお茶の用意をしようとすると,立ち上がりお茶を運ぶ手伝いをしました.ちゃんと食事をしているか心配をするあの頃のように優しいままの青年でした.
青年は仕事を得て,ご両親と幸せに暮らしているようです.
帰り際,「今度メールするね」と青年は言いました.おばあさんが困った顔をすると,「手紙を書くね」そう行って青年は立ち去りました.

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季節はもう秋に...

https://youtu.be/CJyj-HZoDiU