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暮らしの雑文

仏教の根本思想

根本思想(釈尊の真意),時間と空間を超えて不変で有り続ける教えとは何か.

 釈尊の教え(悟り)は,「自己」自身に依り,諸々の従属*1や他の神による自己影響から離れて自己実現*2出来る唯一無二の教えである.

 その教えは,シッダールタ*3比丘が菩提樹下で禅定に入り一切の煩悩(悪魔の誘惑)を断ち切り自分がブッダになったことを覚った,自身が悟りを開くための道理である「縁起」の思想であり,梵天勧請により他を指導教化するために*4五比丘に語り伝達された*5初転法輪」の教えである.

 釈尊の「縁起」思想は,初期経典*6に「縁起を見る者は法をみる.法をみる者は縁起をみる」という名高い言葉をみることができる.
 この世界のもの一切は,必ず変化し滅びゆく.恒常的常住不変の存在は一切なく,生じたものはまた必ず滅する.すべては縁*7によって生じ縁によって消滅することを無限に繰り返す(通時的・時間的縁起,諸行無常).すべては縁によって成立する,存在と存在との関係であるだけでどこにも永遠不滅の実体はない(共時的・空間的縁起,諸法無我)という釈尊の覚った真理の教えであり仏教の根本思想なのである.つまり「AがあるときはBがある.Aが生じるがゆえにBが生じる.AがないときBがない.Aが滅するゆえにBが滅する」,この世の中の事物はすべて相互に依存し合っており,いずれも相対的な存在*8である.

 次に釈尊は成道,覚りを内に秘めてそのまま涅槃に入ろうとしたが,バラモン教の神梵天が,その悟りを他者に説くよう勧め,釈尊は自身の涅槃の境地だけではなく伝道を決意し最初の法を説いた「初転法輪」の教えである.基本的には四諦(因と果を明らかにした4つの真理)の教えである.以下,四諦を記述する.
 「苦諦」は,現実世界の在りようは苦であるという真理である(一切皆苦).人生は苦であり,その苦は四苦八苦*9に分類されている.生=生まれることについても苦ととらえるのは輪廻転生の考えがあるからである.生まれることは,6つの世界(六道*10輪廻)での迷いの生存となるからである.
 「集諦」は,欲望・執着*11(欲愛・有愛・無有愛*12)の尽きないことが苦を生起させているという真理である.「縁起」の真理により,「集諦」(「一切皆苦」の因)は「苦諦」(「一切皆苦」の果)を導き出すのである.
 「滅諦」は苦を滅することが欲望のなくなった理想の境地であるという真理である(涅槃寂静).「縁起」の真理により,「集諦」(「一切皆苦」の因)をなくせば「滅諦」(「涅槃寂静」の果)を導く事ができる.
 「道諦」は苦滅にいたるためには八つの正しい修行方法(八正道)によらなければならないという真理である.すなわち,①正見:正しく法(ありのまま)を見る,②正思:正しく法を思う(思惟),③正語:正しく法を語る,④正業:正しく法を行う,⑤正命:正しい命に生きる,⑥正精進:正しく戎律を犯さぬよう努力する,⑦正念:正しく法を記憶する,⑧正定:正しく心を禅定して安定させる,である.「縁起」の真理により,「道諦」(涅槃寂静の因)は「滅諦」(「涅槃寂静」の果)を導くのである.

 釈尊の入滅後は,金言の永続的承継のための「結集*13」が行われ,教え(経)と戒律(律)の確認を成し遂げた.入滅後100年頃になると,教団は律の解釈をめぐって分裂をかさねた.分裂した各部派*14は,自派の教理にもとづいて聖典を編纂しなおし,独自の解釈を立てて論書を生み出した.それらはアビダルマといわれる.そして,これを集めたものが論蔵(アビダルマ蔵)で,ここに経蔵・律蔵とあわせて三蔵が成立している.

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釈尊最後の旅,涅槃入滅の意義(大般涅槃経典のメインテーマ)について 

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仏陀は我々と同じ様に死をむかえるということなのか,あるいは違うことなのか.
 釈尊でも物質的な死は必ず訪れる.教えと実践により繋がる(現在化される).

② 死とはいったいどういうことなのか.仏陀はどのように死を我々に示そうとしているのか.
 死とはどういうことなのか答えることに意味はない(無記) ,修行に励めば,心の苦しみから最終的に解放される. 

*1:「諸々の従属の中に大きな危険がある」と、この禍いを知って、修行僧は、従属することなく、執著することなく、よく気をつけて、遍歴すべきである。 スッタ二パータ

<解説>「従属」とは「依りかかり止まる」という意味.無常で変滅するものに身をあずけ依りかかり,執着すると安定は得られない.大地が震動すれば自分も動く.従属すべきでないものに従属しては危険である.

*2:真理を自覚した者

*3:サンスクリット語パーリ語ではシッダッタ

*4:仏伝を作成する上で加えられたと考えられる.

*5:五人は次々と悟りを開いて阿羅漢になった.「初転法輪」(初めて真理を説くこと)によって,五比丘たちは弟子となり,最初のサンガ(僧伽)が形成された.これにより三宝(仏,法,サンガ)が整った.

*6:南伝大蔵経

*7:原因と条件(因縁).

*8:言葉も相対的.

*9:生・老・病・死,愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五陰盛苦

*10:天道・人間道・修羅道(三善道),畜生道・餓鬼道・地獄道三悪道).

*11:苦の原因は渇愛(Taṇhā タンハー)存在(Bhavaビハーバ)への執着である.また,何らかの存在として再生したい,と思うことで,輪廻的世界(苦)にとどまることになる.

*12:仏教では「愛」は本質的に自己中心であり欲望・執着である.肯定的な「愛」は,仏教では「慈悲」と呼ぶ.

*13:第一回結集:入滅の年(おおよそ紀元前5世紀末〜紀元前4世紀はじめ).

*14:根本分裂は,戒律の解釈とされるが,その後の部派分裂はさまざまな要因が考えられる.