成道について
〔釈尊出家29歳から成道(修行完成)35歳まで〕
出家したシッダールタ比丘は,二人の師匠*1に入門して禅定*2を極めた.しかし,心の安心を得ることが出来ず二人のもとを離れ6年間に及ぶ苦行を行う.そして菩提樹下で禅定に入り,一切の煩悩(悪魔の誘惑)を断ち切った.
結果,シッダールタ比丘は,縁起の法の結論に至り,自分がブッダになったことを覚った*3.
「縁起」の道理(自分が悟りを開くための教え)
無明(無知) -愛 (欲望) - 取(執着) - 苦(不安・不満)
・この世界のもの一切は,必ず変化し滅びゆく.恒常的常住不変の存在は一切なく,生じたものはまた必ず滅す.すべては縁によって生じ縁によって消滅することを無限に繰り返す*4〔時間的縁起=出来事の原因とその作用によって生じた結果〕.
・すべては縁によって存在するだけでどこにも永遠不滅の実体はない*5〔空間的縁起=存在と存在との関係〕.自己存在が絶対性として存在することはないという洞察,現実認識論.
「非無非有*6」シッダールタ比丘が悟った核心部分である. それまでのインド社会を形成してきたヴェーダ思想バラモン教の教えを根底から揺さぶる内容を秘めた仏陀の誕生である.
・バラモン教(ヒンズー教)には,宇宙を貫く根本原理として「ブラフマン」(宇宙を支配する原理,不変で絶対永遠の原理)=「梵」があり,私たち個人個人には「アートマン」(個人を支配する原理,不変的な自我・肉体が滅んでも不死不滅)=「我」があって,これが一致したと感ずる境地(解脱)という梵我一如(ぼんがいちにょ)の基本的考えがある.
・これに対して,釈尊は諸行無常,諸法無我=「アートマン」という永遠不変の自我などは存在しないと説いている(永遠に存在するものなどないにもかかわらず,それがまるで永遠に存在するかのように錯覚して守ろうとしたり,続けようとしたり,執着するから我々人間は苦しむ=苦しみそのものが迷いである).